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*この記事は「女たちの21世紀」No.88【特集】「女性宰相」待望論の光と影――女性大統領・女性都知事・女性党首時代を読む」の「国内女性ニュース」に掲載したものです。ご寄稿いただいた山口さんの許可を得て特別公開いたします。

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自民党「家庭教育支援法案」―公による家庭への介入懸念

 自民党が来年(2017年)の通常国会で「家庭教育支援法案」を提出する予定だと報道された。国や自治体に家庭教育を支援する施策を策定・実施する責務を課すとともに、学校、保育所や地域住民にそうした施策に協力するよう努めるべきとする法案だ。これに加え、2016年10月から教育再生実行会議では、教育における「家庭の役割」を重要テーマとした議論が始まるなど「家庭教育」をめぐる動きが活発になっている。
 家庭教育をめぐる動きは以前からあったが、特に影響が大きかったのは2006年、第一次安倍政権のもとで改正教育基本法が成立した際、保守運動にとって念願だった家庭教育の項目が導入されたことだ。この後、自治体では「親の学び」についての講座開催やパンフ制作など、家庭教育関係の取り組みが盛んに行われるようになった。こうした取り組みの多くが母親に向けた内容になっていることは見逃せない。2012年12月には熊本県で家庭教育支援条例が成立。この条例は「モデル条例」的な役割を果たし、他県の議員が視察にくるなど自治体での条例づくりや家庭教育施策に大きな影響を与えた。現在、熊本のほか鹿児島、岐阜、群馬、静岡、徳島、宮崎の7県で家庭教育に関する条例が導入されている。
 現段階で明らかになっている「家庭教育支援法案」には、熊本など自治体の条例との共通点が多く、安倍首相をはじめとした保守勢力がすすめてきた「家庭教育支援」の流れにある法律といえる。また法案は、家族を「社会の基礎的な集団」として定めており、自民党の憲法24条改憲案の「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される」という文と呼応する。さらに、保護者が「子に社会との関わりを自覚させ」「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」ために環境を整備する必要性をうたう。「家族」を国家のための人材づくりの場であると明文化しているのだ。
 さらに、この法案において、学校や保健所は家庭教育支援に関する活動の拠点として定められており、その役割がかなり大きい。国、自治体のみならず、学校や保健所までも含めた公の「家庭」への介入がき、地域住民も含めた戦前の隣組的な監視状況さえ起きていく可能性は否定できない。
 「家庭教育支援法」が成立したら、自治体での家庭教育支援条例の制定や、基本計画づくりなどが加速化する。さらに既存の施策にはさらなる予算が投入され、法が定める「国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」ための新たな施策も展開されることになるだろう。
 「家庭教育支援」というと悪いことのように聞こえない面があるが、毎日新聞の報道(11月3日)によれば、自民党内で法案の検討に関わった上野通子参議院議員は「家庭教育ができていない親は責任を負っておらず、明らかに法律(教育基本法)違反。支援法で改めて正す必要がある」と語ったという。公による家庭への介入、及び個の尊厳の否定や既存のジェンダー役割強化に繋がるのではと、危惧しないではいられない。

山口智美/モンタナ州立大学教員

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