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 20016年4月、フランス議会は「買春禁止法」を可決した。これは性的サービスに対価を支払った場合、3750ユーロ(約47万円)以下(初犯は1500ユーロ)の罰金が科せられるというものだが、この法律の成立によって、フランスのセックスワーカーの置かれている状況はさらに厳しくなるといわれている。
 日本における中国人女性の国際結婚、中国人の国際移動の研究者であり、パリの中国人セックスワーカーの支援にも携わるエレン・ルバイさんは、この法律の成立過程に詳しく、議会前で行われた抗議デモにも参加した。2016年7月14日、ルバイさんに「買春禁止法」成立の背景や妥当性、今後の課題についてお話を伺った。そして、セックスワークと移住と「女性の」労働を重ねて研究してきた社会学者の青山薫さんには、日本におけるセックスワーカーを取り巻く現状と課題についても解説していただいた。
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エレン・ルバイさん:

 フランスでは売春は合法です。法的なフレームワークについてお話します。新たな「買春禁止法」に関する5つのポイントです。
 まず1つ目のポイントは、この法律によって客引きの罪が廃止されたことです。
 2つ目は、この法律によって客側が起訴されることになりました。いかなる性的なサービスでも購入する行為は罰金の対象になります。
 3つ目は、売春を辞めるための支援プログラムを導入したことです。売春、斡旋、人身取引の被害者に対して、社会的、専門的なリハビリプログラムが提供されます。
 4つ目は、セックスワーカーが搾取に関して告訴する、あるいは法廷において証人になることを受け入れた場合、一時滞在許可が得られることになったことです。
 5つ目は、暴力事件において、被害者が性別を問わずセックスワーカーであった場合は、加害者の罪が重くなる理由になります。
 フランスの法律の枠組みにおいて新しい要素ではないのですが、重要なポイントとして、売買春の斡旋が不法になるということがあります。金銭の支払いを伴わなくても違法です。ここでは「斡旋」の定義が重要なポイントになります。例えば、インターネットや新聞等で公に宣伝をする行為は罰せられる対象です。また、セックスワークの場所を提供することも犯罪行為となります。フランスの多くのセックスワーカーは、ストリートあるいはインターネット上で仕事をしています。

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歴史的な背景

 法律成立までの約2年間、さまざまな議論がされましたが、特徴は1980~90年代に国際的になされていた議論の反復だったということです。
議論における1つ目の立場は、「売買春そのものが女性に対する暴力である」という考え方です。女性は「被害者」であり、抑圧から女性たちを救うという目的があります。
 2つ目の立場は、売買春には多様な現実があり、性別を問わず、それぞれが権利の主体とみなす考え方です。かれらの能力を高める、エンパワーメントが目的になります。
 この2つの対照的なアプローチは、国際的な条約や声明の文言に影響を与えるためにアドボカシーに取り組んできました。1つの事例として、1995年、北京女性会議(第4回世界女性会議)を挙げます。北京女性会議では、セックスワーカーのエンパワーメントという観点から行われる2つ目のアプローチがみられます。
 2つ目の事例ですが、2000年のパレルモ条約(国際組織犯罪防止条約)に関連しています。この条約のなかには、買春そのものを女性に対する暴力と考え、女性を被害者とみなすというアプローチがみられます。この条約では人身売買の定義というのは、とても広い内容です。フランスの新しい「買春禁止法」は、このパレルモ条約に大きく影響を受けています。

なにが問われているのか

 この法律が問うていたことは、売買春が法的に許容される行為であるのか、そして、売買春は特定の法的な枠組みが必要なものなのか、セックスワークの脱犯罪化、非犯罪化は可能なのだろうかということです。
 社会政策の観点からは、保護かスティグマ化か、という二項対立的なポイントが問われています。セックスワーカーを保護するという見地から、売買春の犯罪化は有効なのかという問いです。
 この法律を支持したのは社会党、共産党、新左翼、極左系の政党などでした。この法案を提出したのは社会党の副党首のモード・オリビエールという女性です。この法案の支持者には買春を廃絶しようという立場がいました。主にカトリック系のグループです。
 法改正に反対する立場だったのは小規模の政党である緑の党です。そして重要なのは、コミュニティを拠点としたNPO、NGOの多くが反対したことです。このようなコミュニティNPOの半数以上は、現在あるいは元セックスワーカーであった人たちがメンバーで、当事者団体として活動しているという特徴があります。そのほかにもセックスワーカーの労働組合も反対しました。当事者団体とは別の理由ですが、警察の組合や裁判官の組合も、この法律に反対しています。
 法改正の反対派で中心となるコミュニティグループの多くは1990年代~2000年代に設立されました。それはフランスのエイズ省(エイズに関連する公的な機関)が1989年に設置されて以降のことです。フランス南部に3つの主要なグループがありますが、うち2グループがパリにあり、そのうちの1つはトランスジェンダーの人たちのグループです。より新しいグループは、アドボカシーグループあるいは労組で、「STRASS」というグループが、今、もっとも活発に運動しています。
 また、セックスワーカーのグループを支援する団体もあります。こうした団体は全国各地にありますが、家族計画に関する活動をする団体は、内部でこの法律に対する立場に分裂がありました。
 国民議会での法案投票日の採決の日には、2つの異なる立場によるデモがありました。法律を支持する立場のデモと、法律に反対する立場のセックスワーカーたちによるデモです。反対のデモには中国人セックスワーカーのグループやトランスジェンダー/トランスセクシュアルの人たちのグループなどが参加しています。
 現社会党政権は、当初、この法律はフランスにおける男女平等の実現に重要な貢献をするだろうと位置づけていました。ちなみに社会党政権は、2年前に平等に関する法律として同性婚を認める法律を成立させています。

反対派の議論

 「買春禁止法」の成立に反対する立場からは、どのような議論をしてきたでしょうか。4つの論点を紹介します。
 1つ目は、セックスワーカーの多様性に関する認識がないことの指摘です。セックスワーカーの声が周縁化されたままだと主張しました。
 2つ目は、セックスワークそのものが暴力ではなく、その労働条件が暴力のより大きな要因となるということです。
 3つ目は、セックスワークの犯罪化は、結果として、セックスワーカーに常にネガティブな影響を与えるということです。セックスワークを犯罪化すると、セックスワーカーの労働条件が悪化してしまいます。警察の取り締まりを恐れて、交渉が必要な契約条件が悪化してしまうのです。セックスワーカーは不可視化され、孤立してしまいます。
 4つ目は、スティグマ化を悪化させるということです。この点については、またあとで説明します。
 また、フランスの政策の目的が明確になっていないという問題も指摘されています。セックスワーカーを保護したい、あるいはセックスワークをやめようとする人を助けたいという欲求は、移民を規制する政策的な目的と重なるところがあるという問題です。

中国人セックスワーカーの事例

 こうした議論を具体的にフランスの中国人セックスワーカーの事例から分析していきたいと思います。
 1つ目に紹介したセックスワーカーの声が周縁化されてしまうという問題についてですが、立法上の手続きのなかで、セックスワーカーが関わっているNGOあるいはその支援者たちは聴聞会に参加してきました。しかし、自分たちの声、自分たちの意見が考慮されていないという印象を立法府に対して持っています。
 パリにおける中国人セックスワーカーは政治家にとって非常に課題の多い事例でした。それは私たちのなかにある偏見、そして既存の理解と大きく異なるという理由からです。
 中国人セックスワーカーの平均年齢は43歳で、人身取引の被害者はいません。ほとんどが独立して働いています。2014年に中国人セックスワーカーたちは自分たちのコレクティブ(グループ)を形成しました。グループ名は「鉄のバラ」といいます。活動の目的は、メンバーの声を伝えていくことです。しかし、活動を通して周縁化やスティグマ化の克服には非常に多くの困難があります。地方の政治家、主に社会党や共産党の議員たちは、このグループとの面会すら拒んでいました。実際に支援していたのは緑の党だけです。
 なぜ政治家たちはセックスワーカーのグループと会うことを拒否しているのでしょうか。政治家たちは中国人セックスワーカーグループに対して非常に差別的な対応をしました。彼らは面会を拒否した理由として「中国人セックスワーカーは代表制に欠けるからだ」といいます。彼らは「中国人のセックスワーカーは非常に恵まれた地位にある」と主張しました。また、「中国人セックスワーカーたちは、ほかの貧しい女性たちのグループによって操られている」「中国人セックスワーカーはおそらく犯罪者である」「ほかの女性たちを搾取している」などといった大変ひどい差別的なことも言いました。このグループが行った最初のデモのときに掲げたプラカードには「私は犯罪者でもないし、犠牲者でもない」と書かれています。
 2番目の暴力というのはセックスワーカーの労働条件から生じるものという論点です。多くの国々と同様にフランスにおいてもセックスワーカーは暴力の対象になってきました。彼女たちが受ける暴力にはさまざまな種類があります。路上で侮辱されるという言葉の暴力や身体的な暴力、レイプもありますし、警察からの虐待もあります。ここは私が特に主張したい重要なことなのですが、人身取引というのは一般化されるものではありません。なぜここが重要なポイントなのかといえば、今回の新しい法律で、セックスワーカーは搾取され、人身取引の被害者であるということが前提となっているからです。中国人セックスワーカーは、非常に不安定な状況のなかで働いていることはありますが、ほとんどが独立した地位で仕事をしています。
 統計的な面から暴力の問題を紹介します。2011年のNGO「世界の医師たち」の調査結果では、55%が身体的暴力を受けたことがあり、38%がレイプの経験があります。23%が客から監禁されたことがあり、17%が殺人の脅迫を受けたことがあります。注目してほしいのは、74%が1度以上、警察に逮捕されたことがあると答えました。平均すると一人のセックスワーカーが1年に6回も逮捕されていることになります。極端な例では、1年に100回逮捕されたという事例もありました。これは非常に深刻なハラスメントです。
 こうした暴力は、スティグマ化と密接に関係があります。セックスワーカーに対するスティグマ化は、セックスワーカーに対する暴力は罰せられるものではない、暴力をふるってもよいという感覚が警官たちや地域の人たちに共有されてしまうのです。このような感覚が広まってしまうと、実際に暴力の被害に遭った女性たちが法に訴えることが難しくなるため大変心配されます。実際、被害に遭った女性たちの21%のみ被害を訴えることができていません。
 3つ目の論点ですが、セックスワーカーやその客の犯罪化、彼らに対する弾圧的、抑圧的な法律は、セックスワーカーの労働条件を悪化させます。そしてその結果、さらに深刻な暴力被害を生み、4つ目の論点であるスティグマをさらに強化することになるのです。セックスワーカーやその客の犯罪化は、セックスワーカーを、よりインフォーマルで孤立した状況に追い込みます。連帯的な支援を求めることも難しくなり、性感染症などのリスクも高まるのです。
 「買春禁止法」が議論される段階で、すでに中国人セックスワーカーへの影響が見られました。一つの影響は彼女たちは、街頭で仕事をしなくなり、インターネットを使うようになったことです。また、いろいろな町を回っていく就労形態に変化しました。そこでの大きな変化は、中国人セックスワーカーが独立して仕事をする形態ではなくて、仲介者を必要とする状況になったという点です。
暴力の被害も増加しているという問題もあります。犯罪化がスティグマを悪化させているからです。
 次は買春を離職するための支援プログラムについて話します。フランスに滞在する資格を持っていない外国人セックスワーカーは、滞在許可をもらうために離職プログラムに申請をします。この支援プログラムの条件は、トレーニングの期間中に、セックスワークを完全にやめなくてはいけないということです。ここで1つの議論が起きました。離職プログラムに申請したのは「よい女性たち」で、申請しないのは「悪い女性たち」だという区別によって、さらなるスティグマ化が起きてしまったということです。

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法律成立の本当の目的は?

 この法律を成立させる目的は何か、優先事項は何なのかということも議論されました。この法律で成し遂げたいことは、セックスワーカーを守ることなのか、それとも非正規の移民を取り締まることなのかということです。
 中国人セックスワーカーの事例が非常に興味深いのは、パリのいくつかの地域における警察の取り締まりの中心的なターゲットが中国人セックスワーカーだったということです。この理由は、中国人セックスワーカーたちはこれまでセックスワークがあまり行われていなかった地域で仕事をしているからでした。
 客引きをしているという理由による警察の取り締まりは1年前からありました。法律が制定されてからも警察の取り締まりは止んでいません。警察が取り締まりをする理由は、中国人セックスワーカーが滞在許可を持っていないからです。警察は、アジア人女性にだけ書類を見せるようにいいます。ここで明らかなのは、彼らの目的は「保護」ではなくて、「取り締まり」だということです。取り締まりが優先順位なので、写真を撮ったり、パスポートのコピーを破いたりなどという脅かしや侮辱的、差別的な行為による取り締まりが行われています。
 このような状況への対応として中国人セックスワーカーは、コレクティブとして、政策を変えるために近隣の地域の人たちとの対話をつくりだそうとしてきました。2015年6月には、中国人セックスワーカー・コレクティブはピクニックを行っています。象徴的な行為として、ベルビルという地域の街頭の掃除をしました。彼女たちにも、このエリアを綺麗にしたいという意思があることを示すためのアクションです。ベルビルの地域住民と会合も開いたことがあります。

おわりに

 結論ですが、1つは、セックスワーカーのグループと協力していくというのが重要だということです。セックスワーカーを支援するNGOである「世界の医療団」がやろうとしているのは、スティグマ化に伴う不安定化、高いリスク、暴力、搾取、警察対応など、新しい法律の影響を記録していくことです。「世界の医療団」は医師たちと中国人セックスワーカーたちと一緒にプログラムを行っています。もう1つは、セックスワーカーの離職支援プログラムが差別的なものではなく、またセックスワーカーに対する社会的なコントロールを強めるものにならないことを確実にすることです。

以上です。ありがとうございました。

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青山薫さん:

 エレンさんとお目にかかるのは初めてなのですが、共通点がすごく多くて感動を覚えているところです。 4点ほどに絞って私のコメントを述べさせていただきたいと思います。
 1点目は、フランスの独特な状況について。2点目は、フランスの状況がいかに世界的に普遍的なことかということ。3点目は、日本への影響をどのように見ていくか。これはアジア女性資料センターからの宿題でもあります。4点目は、アジア女性資料センターがせっかく主催してくださったということなので、私からのフェミニストへの提言をさせていただきたいと思います。 
 まず、1点目、フランス独特の状況についてですが、私は、今回の買春の犯罪化の立法を、上院が3回も否決しているということ、そして2回目に下院で可決されたときの人数に注目します。この議論は、フランスの国会で2年間行われてきました。上院で議論し、下院で否決され、また上院に戻り否決され、今回下院で可決されました。この議論がいかに難しかったかということです。
 最終的に可決されたときの議員の投票者数が非常に少なかったのはショックでした。下院議員は、日本の衆議院と同じで選挙で選ばれるわけですが、577人中たった100人ほどの人たちが投票した結果、可決されてしまったのです。賛成は62でした。非常に非民主的と言わざるを得ない部分があると思います。
 なぜこういうことになってしまったのでしょうか。私が聞いたのは、どちらの立場に立っても難しかった。賛成にしても、反対にしても有権者、支持者が嫌がると議会を欠席してしまった議員がとても多かったと聞いています。
 1つ独特の状況として、賛成派が説得力を持っていた声としては、売る方については非犯罪化していくということです。今までは犯罪であり、罰則があったのに、それをなくしているのですね。かわりに客の法を犯罪化したということで、賛成票を投じた人たちにとっては、非常に強力な魅力でした。「女性のためになる」という議論ができたわけです。ここは、ほかの国に比べて独特なところかと思います。

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「北欧モデル」

 ご存じの方も多いと思いますが、客の犯罪化は、いわゆる「北欧モデル」といわれるものです。そこで行われてきた議論、そしてすでにいろいろな調査が出ていますが、結果はほとんど重なっています。その議論がフランスに影響し、フランスを含むヨーロッパ議会の議論にもなっていきました。ヨーロッパは北欧モデルで買春に対処していこうと議決をしています。
 影響が大きい共通点についてですが、買春の罰則化は、スウェーデン、ノルウェー、アイスランドで行われています。これにはフェミニストたちもさまざまに関わって努力しました。女性に対していい立法をしたという考え方が一方では強いわけです。
 他方、罰則化後のノルウェーでの調査を見ても、やはり以前よりもセックスワークがアンダーグラウンド化しています。そして、多様性を認めていない。自己決定でその仕事をしている人たちにとっては、マイナスでしかない状況になっているのです。自分が犯罪でないといわれも、お客さんが犯罪だったら、商売にならないわけですから。
 リスクを一言でいうと、お客の危険度が相対的に高くなるということです。今までは合法だったので、いわゆる普通の人が客として来ていました。しかし、犯罪化され、客自身が犯罪になる可能性が出てからは、「犯罪でもいいからやりたい」という客の層が必然的に増えます。このリスクは大きいです。まず交渉の時間が少なくなります。捕まえられたら困るから客は短時間の交渉をしたがり、そもそも危ない人の母数が増えてしまったなかで、セックスワーカーは危険な客を見極めなければならないのです。非常に危険だということがわかります。このような調査レポートが、ノルウェーやスウェーデンでも出ました。しかし、このことは立法した人たちはほとんど語りません。研究者や当事者団体が語っているのが、現在の主な状況です。

日本への影響

 日本への影響についてですが、特に外国人の移住の取り締まりとの関係が大きいと思います。日本では2004~2005年、移住の取り締まりと平行して性産業への取り締まりが厳しくなりました。きっかけはアメリカによる人身取引報告書です。その報告書で日本が要注意リストに入れられてしまったために日本政府は慌てて人身取引の行動対策を出しました。それと平行して、不法滞在移民の取り締まりを厳しくするようになったのです。これにより性産業全体のアングラ化、スティグマ化、条件の悪化してしまいました。どこも同じようですが、日本もいわゆる「不法移民」の取り締まりを進めるなかで、性産業が特にターゲットになっています。日本でも北欧モデルでやろうという意見もすでに出てきている状況です。ところが、そういう動きを知っているのはすごく限られた人たちだけです。当事者の声を届ける機会もないまま進められてしまっては非常にまずいと思います。フランスでも2年かかったし、議決にもとても難しいということがありました。しかし日本では、議論自体がなされないまま、一部の人たちのみでただ進んでいるのではないかということを、私は一番危惧しています。

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フェミニズムの課題

 4点目ですが、この問題は非常に難しいのです。セックスワークは約150年、ずっと議論が続いている分野です。フェミニストのなかでも大きな対立があります。当事者のなかでも割れています。非常に難しい問題ではありますが、私がやはり強調したいのは、だれも知らないところで議論、ロビーイングあるいは政策決定を進めてはならないだろうということです。当事者の声あるいは自己決定つまり「私が決めるのだ」ということがフェミニストにとっては非常に大事だったはずだからです。フェミニストのスタンスとして、大きな影響がある法律をつくるときに、当事者や当事者近い支援者や研究者の話を聞かないのは大変な問題ではないでしょうか。
 私はフェミニズムの大事な原点だったはずの、人と人との不平等を解消しよう、女の中の分断を解消しようという視点がないがしろにされているのではないかと感じています。そこを取り戻したいのです。
 セックスワーカーの人たちが、どのようにして、奴隷状態(Situation of Slavery)に陥っていくか、つまり人身取引だったらものすごい搾取に遭って、給料も与えられない、閉じ込められてしまう、パスポートも取り上げられてしまうという状況に陥っていくかという条件を考えました。私の調査の結果、大きな2つの要素に、労働条件(Working Condition)と、人とのネットワーク(Access to Social resources)があることがわかります。
 労働条件が悪化すればするほど、アングラ化して、業界以外の人たちとのつながりが切れてしまいます。そして奴隷に近い、非常な搾取状況に陥りやすくなるということです。状況が悪化すると、無力感や、怒り、憎しみ、後悔などが、自分のなかにわいてきてしまうことがあります。だから、労働条件とネットワークが悪化するということは、スティグマ化だけではなくて、本人の内面でも悪いことが起こると私は考えていました。
 エレンさんの発表にも、そのとおりの結果があり得ると、中国人セックスワーカーの議論をしていただいたのですが、これを防がなければいけないと思います。もし性産業で働いている人の安全を守りたいのならば、労働条件をよくすること、それから彼ら/彼女らの横のつながり、他とのつながりを切れないようにすることが必要なのだと思います。
 以上です。

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