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精神障害のある人々の自立生活―当事者ソーシャルワーカーの可能性精神障害のある人々の自立生活―当事者ソーシャルワーカーの可能性
(2009/09)
加藤 真規子

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 この本は、自らが精神障害を体験した著者による、不思議なちからを持った本だ。本書には、戦後の日本の精神医療保健福祉が、どのように精神障害者を医療や福祉という名の下に囲い込み、構造的な差別を続けてきたのか、という制度史が描かれていると同時に、著者が続けてきた精神障害を経験した人同士のセルフヘルプ活動や、そこでの語り合い・聞き合いの実践のなかで聞こえてきた多様な背景をもった人の雑多な声が著者の回想というかたちで記録されている。土台となっているのは、社会学の博士論文ということだが、型どおりの研究書ではなく、一人の実践家が自らの活動を位置付ける過程で出会ってきた事象や人々との出会いを辿りなおす軌跡を描いていくようなスタイルになっている。
 
著者が記すように、戦後の日本は、「奇跡的な復興をとげるなかで、わが国の経済的な成長に関与できないと判断された人々を社会制度の周縁に追いやった(p.9)」。精神障害がある人は、まさに「周縁に追いやられた人々」だった。さらに、こうした歴史は過去のものではなく、現在でも、国際的にみても突出した数の長期入院という状態に置かれている精神障害がある人を生み出している。そして、多くの精神障害者から、生活の主体として生きるという、本来、当たり前にあるはずの感覚、権利を奪う結果を招いている。
 本書に収めされた精神障害を経験した人たちのオーラル・ヒストリーを読むと、そこには、貧困や孤独、家族のなかの複雑な関係や暴力など、それぞれに過酷な経験と、さらに過酷な入院生活を強いられた経験などが話されている。個々の話は印象深く、会ったことがないそれぞれの人の顔が思い浮かんでくるような独特の記述がなされている。そこには、精神障害を経験してきた人を、「支援される」人としてではなく、ひとりの人として描こうとする著者の意志があらわれているのだと思う。
 「精神障害がある人々が「私の人生の主人公は私である」(p.11)」ための支援制度をつくるためにも、女性の運動とも連携していきたい、と著者は言う。なにより、人への信頼と、他者とのつながりに希望をみいだしている著者の筆は熱い。(瀬山紀子)
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